単索道と、複索道

 架空索道には、
           単線式(米英式)と、複線式(ドイツ式)がある。
単線式は、1条の鋼索を使って運搬を行なうものであり、
複線式は、1条は搬器を支え、他の1条で以って運搬を行なう。
傾斜の変化が甚だしく、運搬量の多い場合は複線式の方が有効と言われている。(高橋 幹氏)

  上部鉄道(石ヶ山丈停車場) 標高835m

                                     ↑↓ ↓ ↑  

  下部鉄道(打除駅) 標高155m
                                          

 石ヶ山丈停車場と、端出場・打除を、結んでいた索道です。
上部鉄道と、下部鉄道は、標高差が有り過ぎ、一本のレールで結ぶことは出来ませんでした。
で、・・・ 索道で連携する事になります。
 左に見える青い2本の線が、明治24年完成の、複式索道。 工費¥32,000 長さ 5,200尺(1585m) 高低差2243尺(680m)
 右の赤い2本の線が、明治31年稼動を始めた、ハリデー式単式索道。 工費¥67,237   500kg積  50m間隔
 これが、日本で最初の、山岳複合鉄道と言われている別子鉱山鉄道の上部線と、索道と、下部線との連携です。

 15・石ヶ山丈索道の項で書いたのですが複式索道は、下荷4で、上荷1で、重力で動いていると思っていました。

 最近、113年前に、光村印刷から、創始者である光村利藻が撮った写真が、「復刻・別子銅山写真帖」として蘇りました。
残念ながら、一般販売はしてないようですが、図書館等で閲覧できます。
白黒写真ですが、デジタル技術により、110年前の写真とは思えないほど、シャープな写真を見せてくれます。
今回の復刻は、36枚ですが、このように素晴らしい写真に復刻出来るのなら、第2版・3版を期待してしまいます。
 その説明文中に、「複式索道の動力は蒸気機関であったが、単式索道の動力は端出場発電所の動力であった。」 と有ります。
末岡照啓先生が、書いているのだから、新しく何か資料を見つけたのかも知れません !!
住友別子鉱山史には、重力で動いていたと書いていましたので、そう思い込んでいましたが、蒸気機関をどの様に、使っっていたのでしょうか ?
にわか、アマチュア別子銅山研究家の私からは、雲の上の存在の先生ですが、機会があれば、お聞きしてみたいです。

 複式索道は、下荷4で、上荷1の、重力差で、動いていたので、下荷は、可能な限り、複式索道を使っていたはずです。
電力を使用する、単式索道は、今のスキー場のリフトと同じで、上荷が、主体であったと思います。
そのあたりは、考状課の資料が出てくれば、解ることなのですが、いつの事になるか ・・・


 端出場(打除)から、石ヶ山丈を、見上げた写真(明治31年)

 複式索道

左の部分拡大してみる。索道の支柱は、三角構造の木製。上に、機器を支える主線が見える。
主線の支持体から下にロープがあり。三角形の頂点で接続されている。
揺れ止めの、スタビライザーだろうか ? 上方に見える、支柱も同じ構造である。
 そして、複式索道と言うからには、もう一本、運搬用のロープがあるはずである。
良く見ると、下の水平構造体にロープが見える。
左が、ピンッと張られ負荷が掛かっている。右下は、弛んでいるのが、解る。
下荷主体で、4対 上荷1と言う事を信じるなら、
上の支柱の上部に、下荷下ろす荷物バケットがあり、下の支柱の写真に写っていない左部分に、
打除から、今から石ヶ山丈停車場まで荷揚げするバケットが、有ると思われる。(左が、上荷・右が、下荷)
 こんなに、運搬用のロープが、弛んでいるとは、思わなかったが、写真が事実であろう。


 ハリデー式単式索道

右の部分の、拡大である。
上荷が主体の索道だったと思われるので、先入観で見てみよう。
まず中央にある空のバケットが目に付く。
そして、良く見ていると、上の橋の影になっているが、荷物を積んだバケットが見える。
ロープが垂れ下がっているので、結構、重い荷物を積んでいるのだろう。

 しかし、何はともあれ、複索道の能力は、石ヶ山丈・索道で書いたように、
下荷 800万貫÷4=200万貫 の、上荷の、能力しかなかったでしょう。
そうすると、上荷 500万貫ー200万貫=300万貫は、単索道の、電力を使い持ち上げたと推論する事が出来ます。
想像として、下荷は、重力を利用する複索道を、フルに使用したと考えられます。

 私の結論として、上空から見ると、左の複式索道は、時計回り。 右の、単式索道は、反時計回り。
上荷と下荷の関係からしても、上部鉄道・石ヶ山丈停車場の狭い空間のレイアウトに、最適な設計になっている。
この事を、発見して、”さすが住友” と、ニヤリとした。