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記憶
〜 MEMORY 〜
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「“嘱託”だってそうだぜ。日本の国益のために働いている」 「だが、少なくとも“嘱託”には、仕事を断る自由がある。目的と手段が入れ代わることもない」 「なるほどねえ」 須王の目的は、あくまでも復讐。 だから“嘱託”に参加しているのは、そのための手段にすぎないというわけか。 つらつらと呑気に考えている間にも、飛鷹の手は忙しく働いて、敵を次々と倒している。須王は攻撃が手薄になったところを狙ってジグザグに走った。 「あと二分で伊達が来る。それまでの辛抱だ」 「間に合わない可能性のほう高いってのを忘れちゃ困るぜ。俺を捨てるなら今のうちなんだがな」 「往生際の悪いことを言うな。俺がつれて行くと決めたんだから、つれていくんだ。変更はしない」 「……頭カタイな。彪馬並みだ」 「そこまではひどくはないつもりだが」 須王は肩ごしに振り返ってニヤリと笑った。 「言ったはずだ。俺は仲間を見殺しにはしない。俺のせいで死なせもしない。もう二度と」 処置無しだ。 飛鷹は、それ以上の口論をあきあめた。 「決めたぜ、須王。お前は俺の“コンビを組みたくない相手”ベスト3入り決定だ」 「ちなみにベスト1は遼子か?」 「バカ言うな」 飛鷹はいかにも嫌そうに顔をしかめながら言った。 「彪馬に決まっているだろ」 遠くから、かすかnヘリの爆音が響いてきた。 須王と飛鷹が身をひそめている物陰からは、パイプが邪魔になってよく見えない。それでも二人はプロだから、っどちらかの端にヘリが近づいてきているか 、すぐに判断できた。 敵も、もちろんヘリの接近に気づいているだろう。パイプに当たる銃弾の数が二倍になった。なんとしてもここで飛鷹たちを葬ってしまうつもりだ。 「出るぞ」 短い言葉と共に、須王の全身の筋肉がぎゅっと引き締まった。獲物に飛びかかる猛獣のように、身を縮める。 飛鷹も呼吸を整えた。 そして----吸おうが飛びだそうとした、瞬間。 「え……!?」 機銃掃射としかいいようのない音が炸裂した。 そのごう音にかぶさって、ヘリの爆音が二つ。 見上げた空を覆うようにして、二台のヘリが現れた。一台は通常の垂直離陸機。もう一台は戦闘ヘリ。 「富城のやつ、伊達に食いついてきやがったぜ。ボーヤのくせに、けっこうやるもんだな」 飛鷹がヘリを仰ぎ、口端を笑いの形に歪めた。 二台は争うようにして屋上に降下してくる。だが、富城のヘリのほうがスピードで勝った。須王は飛鷹を揺すり上げ、富城のヘリ目がけて一直線に走る。その大胆な動きに、敵もッギョッとして身を乗り出した。 それを狙って、伊達の戦闘ヘリの機銃が火を吹いた。 対ゲリラ戦でよく使われる、二台のヘリを使った殲滅作戦だ。片方のヘリの動きに敵の目を引きつけておいて、もう一台が一斉掃射を行うのである。 ただでさえ須王と飛鷹によって数を減らされていた敵は、プロの操るヘリの前に、ひとたまりもなかった。 飛鷹は富城のヘリに乗った。 須王は伊達の戦闘ヘリに。 ミッションが終わったからには、一瞬たりとも殺し屋なんかのそあにいたくない、と須王が主張したからだ。 「ヘンなの」 富城は操縦桿を握ったまま口を尖らせた。 「ちさっきまでは、仁がケガしてるから何がなんでも五分以内に来いって言ってたのにさ」 「フクザツなんだよ、須王ってえ男は。俺やおめえみたいな単純バカにはとうてい理解できないのさ」 「一方的にひとくくりにすんなよ!」 むくれる富城にかまわず、飛鷹は無線のスイッチを入れ、須王を呼び出した。 「よお、須王」 須王の返事も待たず、一方的に言う。 「今度一緒に仕事するときには、傭兵やってた頃の話を聞かせてくれよな」 「………お前にそんなことしてやる義理はない」 「そう言うなよ。俺たち、ナカマなんだからさ」 ナカマ、という単語に力をこめる。ぐう、と吸おうがスピーカーの向こうで唸った。 飛鷹は意地悪く笑いながら、つけ加えた。 「ほうら、俺を見捨てれば、昔話をねだられることもなかったんだぜ。判断ミスが多いな、須王」 無線機は沈黙している。 きっと向こうのヘリの中では、句や始祖王に黙り込んだ須王を観て伊達が驚いていることだろう。 その光景を想像してクックッと笑いを漏らしながら、飛鷹は無線機のスイッチを切った。 それでも。 それでも----あのときの判断は。 ここから先の人生を、部下亜たちの復讐をするために生きようと決めた事は。 正しかったと、信じているけれど。 | |
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