Angel‘s Squaer LOVE STORY 〜大地〜 [1]
Written by みみこ
屈託なく笑う金の髪の少女が、宇宙の女王になってから、
聖地の時間でおよそ10年ばかりもたったであろうか。
・・・・・・・それは、突然訪れた。
「陛下!いかがなされました?」
異変に気づいた女王補佐官の声が宮殿に響く。
金髪の女王は玉座から崩れ落ちるように倒れた。
「・・・!! アンジェリークっ!!」
あわてて駆け寄るロザリアの腕の中で、力無く女王は微笑んだ。
「ごめんなさい、ロザリア。私、もう・・・・」
一瞬にして女王が何を言わんとしているか理解したロザリアは、甲高い声で侍女を呼んだ・・・・。
「・・・・・起こってはならないことが起きてしまいましたわ」
とりあえず女王を寝所に運んだあと、すぐに守護聖全員を一室に集めたロザリアは、
青ざめた表情でそう皆に告げた。
「いったい、陛下はどうなされたのだ」
冷静であることを常とする光の守護聖だったが、この時ばかりは動揺を隠せないでいる。
軽く後ろで束ねた長い金髪は、心なしかいつもより鈍い輝きをはなっているようにみえた。
ロザリアをみつめ、次の言葉を固唾を飲んで見守る
他の守護聖たちにも、ジュリアスの動揺は理解できる。
何故なら・・・つい先程まで聖地に、いや、この宇宙全体に
満ち溢れていた女王のサクリアが、突然微弱なものになってしまったからである。
こんなに突然に、しかも急激に。
女王のサクリアも、守護聖のサクリアも、本来は少しずつその衰えを
自分で、そして周囲も感じつつ、交代の準備に入るものだというのに。
何の前触れもなく、女王のサクリアが失われるということは、即、宇宙の崩壊の危機をも
意味しているのだ。
「ロザリア・・・補佐官の君がついていながら、何故陛下の様子に今まで気づかなかったの?
どうして陛下は突然お倒れに?」
何故、ということばを守護聖全員が心の中で反芻していながら、実際口に出したのは
緑の守護聖であった。かつて少女のようにはかなげであどけなかった少年も、今ではすっかり
大人の男性になっていた。
まるで前緑の守護聖・・・カティスを思い起こさせるような青年に。
答えをためらう補佐官をかばうようにランディが割って入る。
「マルセル、ロザリアを責めても事態は変わらないよ。
俺達に必要なのは、まず状況を正確に把握して、今後の対応を考えることだ」
マルセルははっとしてロザリアを見ると、自分の愚かさにきづいたように言った。
「済まない、ロザリア。君だって心配なのは一緒なのに・・・」
マルセルの言葉を受けて、ロザリアは小さく首を振った。
現女王が女王候補だった折りにまだ少年であったものたちは、現在は守護聖の中心となって
執務をこなしている身である。彼らの行動には首座の守護聖であるジュリアス、
対をなすクラヴィスももはやほとんど口出しをしない。
ルヴァにいたっては、すっかり王立図書館の隠居司書のような暮らしをしていた。
当然、守護聖としての義務は果たすが、年の若い守護聖たちのお目付け役のような
立場である。
落ち着いた光と闇の守護聖を気遣ってか、炎と水の守護聖も、自分がでしゃばって守護聖の
中心になろうなどとは考えないようである。
夢の守護聖は日々どうしても衰えつつある美貌のケアに専念している毎日だ。
まだまだ美しいとはいえ、日差しの強い日はつばの広い帽子と日傘を携帯して外出している
あたり、かなり気にしているのかもしれない。
年かさの守護聖がそんな様子なので、守護聖の集う話し合いの席においても、
元年少組3人・・・いまでは立派な青年たちが自然と進行役となっていくのであった。
「とりあえず、今の女王陛下の体調はどうなんだ?話もできないっていうのか?」
背は高くなったが、ますます傍若無人な態度に磨きがかかった鋼の守護聖ゼフェルは、一番
気になっていたことを尋ねる。
「・・・いえ、意識はしっかりしていらっしゃいます。でも、全身の脱力感とともに、お身体の自由がきかなくなって・・・・」
ロザリアは言いづらそうに続けた。
・・・「陛下のお力はもう、あと少しで尽きてしまわれるかと・・・考えられます」
予想はしていたことだが、改めて女王の側近である補佐官の口から
はっきりそう言われることは、守護聖たちにとって衝撃であった。
「そんな!こんなに突然、女王の交代なんて・・・無理だよ。
まだ次代の女王候補の選出だってしていないのに」
姿は大人だが、素直なままのマルセルはまた真っ先に言った。
「落ち着け、マルセル」
ゼフェルはマルセルを制したあと、ロザリアに向き直って尋ねる。
「女王陛下から、次代の候補について何か聞いていないのか?」
それを見ていたルヴァは隅っこのほうでかすかに微笑んだ。
・・・私の役目は終わりに近づいているのかもしれない・・・・
すっかり成長した「生徒」を見つめて、彼はしみじみ感じていた。
「ええ。それはまだ・・・ただ、可能性についてはかなり以前からいろいろ話はしておりました」
それまで黙っていたオスカーが口を開いた。
「それなら、話のしようはあるだろう。
・・・クラヴィス様、候補となる人間のサクリアはどの方向から感じられるか、わかりますか?」
「・・・・いや、まだはっきりとはわからぬ。
混沌としたサクリアが、微弱な程度に感じられるだけだ。
・・・それが女王のサクリアなのかそれとも守護聖のサクリアなのか、それすらもわからない」
クラヴィスの言わんとしている意味を解して、守護聖たちは息を飲んだ。
光と、地の守護聖をのぞいて・・・。
女王のサクリアの急激な衰退と共に、守護聖のうちの誰かも交代の時期を
迎えているというのか。何もかも、こんなに突然に。
「王立研究院の主任研究員たちと守護聖でチームをつくろう。
クラヴィス様の水晶球が示すわずかな兆候から、手がかりを探っていくんだ。
「候補」のいる天体の場所も確定していかなければならないし」
ランディが提案するとオスカーも続けた。
「それから聖地の治安を最優先させるために王立派遣軍の配備を徹底させておいたほうが
いいな。こういうときに何か起こると厄介だ」
「ついでに全宇宙に緘口令を敷いといたほうが良くないか?デマでも流出したらことだぜ」
ゼフェルたちの話し合いを横目に、ルヴァはそっと部屋を出て行った。
オリヴィエはそれに気づくと、傍らの水の守護聖に囁いた。
「なんか、ルヴァってば変じゃない?」
リュミエールは目を伏せた。
「・・・・ルヴァ様のご様子については、先程から気になってはいたのですが・・・。
やはり陛下のお身体がご心配なのではないでしょうか」
「うーん。それだけじゃないって感じなのよね・・・」
夢の守護聖はマニキュアの爪を無意識にはじいた。