講演

自動車運転と健康管理


交通安全と成人病(その1)

次に、最近よくいわれております成人病について、お話しを始めます。
成人病と、交通安全運転との関係につきましては後ほどお話ししますが、現在は飽食時代ともいわれていまして、戦後の食べるもがない時代の栄養失調とは別に新たな問題を引き起こしています。もっとも一般的には先ず肥満が上げられます。
過食、運動不足、アルコールこれらが引き起こす肥満、特に上半身型肥満は、高血圧、高脂血症、糖尿病を引き起こすことがあります。これらの病気は時間を経て動脈硬化に結びつき、様々な病気を引き起こしています。まず、一般的には脳卒中、心筋梗塞、下肢動脈血栓症、眼底出血、失明、その他にも数え切れない病気を引き起こしています。こららは肥満症の方に限ったことではありません。高血圧も糖尿病も高脂血症も体型に関係ないこともあります。

 ふだん新聞などで、交通事故の記事に、センターラインをこえ、ブレーキを踏んだ後がないことから居眠り運転か、よそ見運転が原因と思われるというような記事をご覧になることがあるかと思われますが、確かに居眠り・よそ見もあるかもしれません。しかし実は車を運転している最中はストレスも加わるために、脳卒中、眼底出血、心筋梗塞等の発生は通常の生活状態より数倍多いといわれています。また、これらの病気は最近では、決して老人病ではなく若年者にも発せする率が多くなり、30代で脳梗塞となっておられる方もいます。不幸にも運転中に脳卒中を引き起こした方は意識を失うか、又意識があっても手足の自由が効かない、目が見えないという状態になり対向車や前方の障害物に正面衝突し、不幸な結果となっているのです。

血圧の収縮期血圧すなわち心臓が縮む時の血圧ですが、実際には上の血圧と呼ばれていますが150を越えたり、下の血圧、拡張期血圧が90を越えている方は、要注意と言えます。まず血圧が高目の方やまた一般的に塩辛い食べ物がお好きの方は、塩分の量を制限しなくてはなりません。望ましい塩分量は1日は8〜10グラムですが、皆さんのご家庭でこれらは守られているでしょうか。例えば朝、味噌汁、たくあんを食べ、昼にインスタントラーメンを食べた、それだけでもう10グラムになるのです。うどんも汁まで飲むと5グラム、にぎり寿司も一人前4グラム、ここのうどんはこしがあっておいしいとういう讃岐うどんは、塩が多いかもしれません。ちなみに香川県には血圧が高い方が多いといわれています。先ず食餌療法を試み、それでもなおかつ血圧の高い方は、いうまでもなく医師の治療を受けなくてはなりません。
 日本人の血圧の高い方は、おおかたが本態性高血圧といわれ、おばあちゃんも、お父さんもみんな血圧が高かったというような遺伝的素因を受け継いでいます。しかし、こういう家系は、伝統的に、塩分の摂取量が多いのではないかと言われています。若い人の中でも脳動脈瘤などがさけて起きるくも膜下出血は、やはり血圧の高い方に多くみられ、もし車の運転中に発症すれば大事故になるのです。

つぎにコレステロールが高いというお話を聞かれることが多いかと思われますが、これも現代病の一つです。これらも動脈硬化に直接関係するだけに要注意といえます。戦後日本人は芋のツル、はったい粉、麦、粟、そば等で空腹をしのいだ時期がありました。卵などは高級品の時代もありました。その卵を食べると元気になる、ホルモン焼きを食べよう、蛎を食べると元気になる、たしかに粗食時代、ものがない時代にはそれも真実であったかもしれません。しかし、今私たちの家庭にあがる食卓を見てみますと、御馳走類はすべてコレステロールといっても差し支えありません。確かにコレステロール食品は美味で、皆さんの好きなもが多いと思われます。血清コレステロールの値を35歳過ぎれば健康診断、或いは病院で検査を受けることをお勧めします。もしその値が220を越えていれば要注意で、これも食事療法から開始し、250を越えていれば治療が必要となります。40歳を過ぎれば、昔、おじいちゃん・おばあちゃんが食べていた豆腐に菜っぱを入れて、食べていたいたことを思い出したいものです。この飽食時代のために、日本人の平均寿命は世界一から年々下がってくると厚生省のお役人は心配しています。


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