涼 州 詞 王 翰 |
![]() 故郷を遠く離れ 戦場での戦いのつかの間を 琵琶を聞き酒を飲んでまぎらす 兵士の姿を 歌った詩です。 王 之 渙の「涼 州 詞」共に 辺塞詩の 傑作だと思います。 | 葡萄の美酒夜光の杯 飲まんと欲すれば琵琶馬上に催す 酔うて沙場に臥す君笑うこと莫れ 古来征戦幾人か回る |
【通 釈】 葡萄のうま酒を,夜光杯で飲もうとしていると,誰かが馬上で 琵琶をかなで 美しい音色を響かせている。 酒に酔いつぶれ 砂漠の上に倒れ伏してしまったが こんな ぶざまな姿を見て 笑わないでくれ。昔から 戦に行って いったい 何人帰って来ただろうか。 私も、明日の命がわからないのだから。【語 釈】 涼州詞=涼州は唐の西北の国境、今の甘粛省武威県。“涼州での歌”でよいと思う 辺地の風景や戦の苦しみの心情を詠ったものが多い。 葡萄の美酒=西域産のぶどう酒で、ギリシャから伝わり、西域地方の名産。一度飲んでみたい。 酒夜光杯(やこうはい)=西域の白玉製のさかずき。杯を、「の」(助詞)を入れて(の杯と)読む場合は 「さかずき」と読む。一字の熟語は訓読、複数の熟語は音読が原則。「例」富士山(さん)富士の山(やま).... 催す=奏でられる。かき鳴らす。 沙場=砂漠地帯、砂の上。 君=ここでは回りの人達、私達読者に訴えている。 征戦=戦いに赴くこと。 【鑑 賞】 非常に胸を締め付けられる それでいて格調高い詩です。 この詩は 哀愁溢れる感情を暗いイメージでなく、美しい響きをもって歌っていると思います。 特に 起句の 葡萄 美酒 夜光 の詩句がこの詩全体を いやがうえにも 美しく輝かせていると思います。そして、転句で「笑」の文字はひときわ重み があり、結句に於いて、押さえた悲しみを強烈に表現しています。 「笑」の後に押さえた悲しみ(古来...)で結んでいるだけに、一層強い印象が余韻として残ります。 正に、傑作中の傑作だと思います。 この詩は、唐詩の七言絶句の中でも圧巻と称され、吟詠家の間でもよく吟じられ 私も吟詠大会ではよく吟じたものです。