将に東遊せんとして壁に題す 釈 月性(1817−1858) |
男児志を立てて郷関を出ず 学若し成る無くんば復還らず 骨を埋むる何ぞ期せん墳墓の地 人間到る処青山有り |
【釈 月性】 幕末の勤皇僧。周防国(山口県)の遠崎村、妙園寺の住職。 常に尊王攘夷を説き、海防を論じ、海防僧と呼ばれた。米艦が浦賀に来航、 翌安政元年に阿部老中が仮条約を定め、下田、函館、長崎の三港に限り、貿易 を許したとき、これを非難し、四十二才で没した。 【通 釈】 ひとたび男子たるもの志を立てて郷里を出たからには、学業が成るまでは 絶対に帰らない決心である。骨を埋めるにどうして故郷の墓地に執着しょうか。 広い世間には、どこへ行っても骨を埋める青々とした墓地があるではないか。 学問の為、故郷を後にして、上京する青年の志を詠った詩である。 【語 釈】 東遊=東方に上京する。遊学する。 題壁=壁に詩文を書き付けること 中国の文人がよく行う習慣で、ここでは決意の程を書き残す意味。 郷関=郷里。郷里の関門の意。 不復還=絶対に帰らない。還は又もとの所にもどる。 青山=墓。中国では墓の別名。 【鑑 賞】 この詩は別の読み方でもよく知られている。 「男子志を立て、郷関を出ず 学もし成らずんば死すとも帰らず。 骨をうずむ豈ただ 墳墓の地のみならんや 人間いたる処青山あり」 送別の宴などで、よく吟じられる詩として知られている。 又、送別の詩として有名な詩に、王維の詩があるので、追記する。 |