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山中の月 真山民 |
我は愛す山中の月 烱然として疎林に掛かるを 幽独の人を憐むが為に 流光衣襟に散ず 我が心本月の如く 月も亦我が心の如し 心と月と両つながら相照し 清夜長えに相尋ぬ | 【通 釈】 私は山中にかかっている月、特に木のまばらな林を 照らしている月を最も愛す。 この静かに隠棲している私を憐れむかのように、 月の光は私の着物のえりあたりを照らしてくれる。 私の心はもともと月のように無欲で清らかだ。 あのすがすがしい月もまた私の心と同じだ。我が心と 月とが互いに照らし合ってこの素晴らしい、美しい夜を いつまでも尋ね合うのである。 【語 釈】 烱然=月の光り輝くさま。疎林=木のまばらに生えている林。 幽独の人=静かに一人でいる人。ここでは真山民自身。 流光=月の光。衣襟=着物のえり。 |
【鑑 賞】 山中を照らす月を詠じながら自分の心を 見つめている詩。 月を詠じた詩では傑作と言えるのではなか ろうか。私の最も好きな詩で、私の「詠月」は この詩に魅せられて付けた雅号である。 前半では山中のまばらな林を照らしている 月を愛すると詠い、後半で月と自分の心とを 尋ね合い照らし合いながら、静かな夜を過ご して自分を詠っている。 |
【真山民】(1274 頃) 南宋の詩人。遺民で世を逃れ、人に知られる ことをきらい自分で「山民」と呼んだ。現世を逃れ、 山中で生活を送った。 著に「真山民集」がある。又、「山間の秋夜」や 「暁に山間を行く」など山中の生活をうたった詩がある。 「山中の月」の姉妹篇として、「山中の松」「山中の梅」 「山中の雲」がある。 尚、この詩は頷聯と徑聯が対句をなしていないので 古体詩となる。 |