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時に憩う 良 寛(1758〜1831) |
薪を担うて翠岑を下る 翠岑路は平かならず 時に憩う長松の下 静かに聞く春禽の声 【語 釈】 薪=木などを割った、 燃やす燃料。今では、 キャンプファイヤーに使う。 翠岑=春の青々とした山や峰。 翠=みどり。岑=みね。 長松=背丈の高い松。 春禽=春の鳥で、ここでは、鶯のことだと思う。 | 【通 釈】 背中一杯に、薪を背負って、春の緑の峰を下る。 清々(すがすが)しく、気持ちのいゝ、緑の峰であるが 路は凸凹して、平らかではない。 喘ぎながらも、やっとのことで、大きな松の木の下 にたどり着いた。 さー..このあたりで、ひと休みしようか..!! 松の木陰で、涼しい風に吹かれながら、憩うていると どこで鳴いているのか、鶯の声が聞えてくる。 静かに、聞き入っていると、周りの静けさが 一層静かで心地よい。 正に「静けさや 岩にしみいる 蝉の声」.. と言う処でしょうか!! |
【鑑 賞】 この詩を読んで、先ず思い出すのは、二宮尊得翁です。 終戦まで、私の学んだ小学校(当時は国民学校)の校門を入った処に本を読みながら、 薪を背負っている、二宮金次郎の銅像が有りました。 仕事に励みながらも、寸暇でも学問を忘れない当時の教育方針の象徴だったと思います。 ここで、私が この詩を鑑賞しながら、ふと気がついたのは、薪を担って山を 下るのは、新緑の候とはいえ、大変な重労働の筈である。 それが、良寛さんは、野山を、楽しみながらの散歩か、バードヲッチングでも しているかのような、楽しそうな姿に映るのである。 これも、良寛さんの人柄だろうか..! |