土佐街道周辺の巨樹 ・・・ /6


          23番札所、薬王寺の門前から、牟岐線を渡って大浜海岸へ。この砂浜を守護するように、八幡神社の大き

          な社叢が一面に広がっている。


日和佐八幡神社の楠 目通り11.12☆6.8m/樹高20m/枝張り18m/日和佐町日和佐浦・八幡神社


  

         照葉樹の茂る神域で、最大の楠はその社頭にある。公道に面しているためか、やや煩雑な周辺だが、根

          元近くから2株に分かれた幹は健康で逞しい。長い参道の両側と、お社の周辺にも大きな楠が立っている。

          八幡神社は源氏の氏神である。こうも八幡神社が多いのは、あの源氏の大勝利の為だろうか?


           八幡神社の裏は大浜海岸で、一帯は国定自然公園となっている。赤ウミガメが産卵にやっくる砂浜として

           有名な所だが、それも神社の高い樹木が喧噪を遮断しているという事が一因ではないだろうか。もうこのよ

           うな所が四国でも殆ど残っていないという事実と、よく残っていたなあ、という驚き。

           広々と開けた風景が、やや小さく纏まった箱庭のようにも見えた。


           八幡神社を後にして、ここから暫く海を臨む山道を少し北に上る。日和佐町の隣にある由岐町へ、四国

           最大のヤマモモを見に、山座峠を越えて行く。

           由岐町は海と山とに幽閉されたような所で、とても町の中心部に向かっているとは思えない。たどり着いた

           小さな町からまた少し山手に上った民家の耕地に、こんもりと茂った深緑の繁茂が見えた。


由岐のヤマモモ  目通り4.32m/樹高18m/枝張り14m/由岐町志和岐谷/県指定天然記念物


   

          おそらく四国では最大で、種としてもかなりの巨木だろう。4本の大枝のうち1本が昭和63年の台風で折れ

          て、今は金属板で蓋をしている。しかし樹勢は良好で、よく張った幹と、絡むように伸びた枝葉は小気味良い。

          今も大粒の果実を多くつけるといい、昔はカゴ一杯の実を浜に売りに行ったとか?


          先に進むのが躊躇われる程、長閑な所だった。ただ先は長い。またゆっくりと土佐街道に戻ろう。

          ここからまた暫くは、海の見えない山中の道が続く。しかし、昔の人はよく舗装路もトンネルも無いこの山道

          を、延々と歩き通したものだ。特に紀貫之や弘法大師の時代は、馬さえ通れないような樹の生い茂った泥道

          だっただろうに。藪をかき分けかき分け進む青年の僧が、この先の室戸岬で空海と名のるのだが・・・


          日和佐トンネルを抜け、再び海岸沿いに下りてきた所が牟岐町である。ツブラジイのある山神神社は、少し

          手前の辺川から、牟岐線を越えて北西に上る山の中にある。


山神神社のツブラジイ  目通り6.96m/樹高8m/枝張り23m/牟岐町喜来・山神神社


          喜来に入ってから、北側の田圃の向こうに神社が見える。山沿いにある神域は別のお社で、山神神社はそ

          の神社より少し離れた山中の、木々に埋もれるような所にあった。最大の物は境内の上にあり、石段の脇

          にも大きなシイが何本かある。目通りは印象で5m程だったが、この種としては四国でもかなり大きい。樹勢

          も良く、山神様を鎮るシイの群生は、他には無かった独特な良い雰囲気があった。喜来とは又いい名前だ。


          牟岐町を後にして、次は阿波路最後の町宍喰町に向かう。