吉野川南岸の巨樹 ・・・ /4


  

  

  石井町の隣は鴨島町である。ここで又少し川岸から離れて国道192号線を渡る。徳島本線鴨島駅から少し

           山手に上った森藤に、徳島でも有数の大楠がある。  


壇の大楠  目通り10.15m/樹高24m/枝張り32.5m/鴨島町森藤・平山/県指定天然記念物


 

 町を一望にする高台に、簡素な白木の鳥居と小さな祠がある。そこにある楠の巨樹は、四国でも26本しか無

  い目通り10m以上の巨樹である。30mを越える大繁茂は町を越えた近況からも見え、低くたなびいた大枝の迫

  力は見応えがある。やはり胴内に空洞があるようで、多少小枝の欠損も見られるが、樹勢は良好のようである。

          1185年、阿波国麻植守保司として着任した平康頼が植えたという。すると樹齢は814年という事か。


 ここでようやく吉野川に戻る。このあたりの川岸も、広々とした河原が両翼に広がっていて、この様子がずっと

          池田町の近くまで続いているのだから、この川は四国には似合わない程の雄大なものだ。

   さて、鴨島町から川島町を越えて山川町に入る。山川町には、「撫養街道」の項でふれた霊山「高越山」がある。

          この山頂に上る前に、山川町にある4本の楠の巨樹をます゛見てみよう。


春日の大楠  目通り7.1m/樹高26m/枝張り27.3m/山川町春日・春日神社


            

 護岸の道路からその繁茂が見える。樹形があっさりしているのと樹下がやや煩雑なので、目通りほどの存

在感が無い。素直な丸みを持った幹は、まだ若々しい印象で、樹齢も300〜400年程というところか。根元

が癒着した若い株があり、これが一本に合体する頃には、幹に立ち寄る足が一旦止まってしまう、あの凄み

          のある樹相をもった巨樹になっている事だろう。


春日からまた少し川沿いの道を行く。右には壮快に開けた風景。そして左に綺麗な白壁が見えてきた。そ

          の向こうに日に照り輝いた鮮烈な緑の樹冠がある。


野郷神社の楠  目通り6.94m/樹高20m/枝張り26m/山川町北島・野郷神社


朽ちかけた小さなお社である。その裏にたつ楠が見事なだけに、その好対照が妙に面白い。歳月を経て

 朽ち果てるものと更に立派になるもの。かなり前に一度訪れていたが、改めて見てその幹の頑強に張った

           偉観にまた感心する。道路が根元のすぐ横を通っているのがやや心配ではあるけれども。


   川向こうの阿讃山脈が青くたなびいている。水はゆったりと流れて、空はやや気後れする程に広い。護岸道

の先にまた楠の繁茂が見えてきた。この川沿いには楠の巨木が多い。やはり楠は平野部の王者だ。


東川田の楠  目通り12.35m/樹高22m/枝張り22.1m/山川町川田市


         

 目通りでは徳島で第2位といわれる大楠である。根元近くから枝分かれした樹相で、一部枯渇して繁茂は

やや小さい。樹下に鳥居と墓石が一つあり、少し妙な取り合わせである。以前はお社のある神域だったの

 だろうか。最初に訪れたときは朝方の薄暗い時間で、ツタの猛烈に絡まった根元の異様が印象的だったが

           枝折れでやや衰退したか。、またこれからは再び成長して更なる巨樹になっていくのだろう。     ■関連する画像■


 

 南に切り立った高越山が見える。ここから吉野川を離れて、山川町の町中に入って行く。もう1本の大楠

            は、すぐ近くの井田権現にある。