天国への扉(1)



 これは私が生まれてはじめて書いた「文学らしきもの」です。カタコトの日本語が出てくる不思議な作品ですが、書いた当時(1994年夏)は日本語の教師をめざそうとは考えていませんでした。そんなに長いものではないので、少しづつお読みください。
 ところで、この作品は谷山浩子さんのアルバム「お昼寝宮・お散歩宮」のイメージで書いたので、所々にこの中からの曲をバックミュージックとして指定してあります。  


 
 

ルルル・・・・・・

 プロペラの音が聞こえている。

 その老人は暗い機内にひとり横たえられていた。そこに他に人はなく、時々揺れるカーテンの隙間から漏れる陽の光だけが外界の存在を告げていた。

「離陸します。ベルトはよろしいですね。」仕切りの向こうから女の人の声がする。

  ブルルルルル

 プロペラの音が急に高くなり、飛行機が動き出す。次の瞬間、老人の身体に離陸の圧力が加わった。老人は少しの間その力に押し潰されそうになったが、すぐにそれから解放された。プロペラの音が軽くなり、飛行機はもう大空を飛んでいた。
 

   オープニングテーマ:谷山浩子「お昼寝宮・お散歩宮」より「お昼寝宮・お散歩宮」
 
 

[次へ→]

[アニメのこと]