住宅改造と介護費用の比較検討
建設省実施の意識調査で
「家を建てる際に高齢者仕様への配慮をすべきか」という問いに対し
「将来に備えておくべきだとは思うが、具体的な内容や費用が分から
ず、なんとも言えない」という回答が1/3を占めている。
もっと具体的な意見としては、
「将来必要になるかどうか分からない高価な介護機器を取り付けるの
はどうか」
「自分は妻や娘に面倒を見てもらうから大丈夫」
「高齢者住宅を購入すれば介護が不要になるのかどうか、はっきりし
ない」
要するに住宅にお金をかけた場合、それに見合うだけの効果があるか
どうか、といった情報が不足しているのだと言えます。
急速な高齢化がすすんでおり介護が必要となる確立の高い後期高齢者
層の急増が見込まれます。
一方、今まで介護を必要とする高齢者を支えてきた家族機能も大きく
変化すると予想されます。
女子の労働参加の進展、家意識の変化、一人暮らし老人や老夫婦世帯
の増加等により、在宅介護の担い手不足が懸念されます。
こうした中で、高齢者に豊かで人間的な生活を保障するには、可能な
かぎり「自立生活」を続けられるような住宅・社会資本の整備が急務
だと言えます。
「障害高齢者の自立能力の向上を目指した住宅を整備する事により、
介護負担の軽減がどの程度期待できるか」住宅の新築時に高齢者仕様
とすることにより、将来要介護となった場合の介護費用の軽減がどれ
だけ見込めるかを算定しています。
1.高齢者住宅の仕様として、杖歩行程度の高齢者がほぼ自立できる
ように、段差解消及び手すり設置の基本仕様をほどこした住宅
(高齢者住宅T)
2.重度障害の高齢者を対象として、Tの仕様に玄関スロープ設置や
トイレ・浴室面積拡大などを付加した住宅
(高齢者住宅U)
の2タイプを設定しています。
この設定のもとで、高齢者住宅への移行によって介護量がどう軽減す
るかを算定し、それを介護市場価格で評価することにより高齢者住宅
整備による介護費用軽減額を求めました。
・算定の結果 建設費用のアップ分は、
高齢者住宅Tが 54万円、
高齢者住宅Uが400万円となった。
一方、介護費用軽減額は
高齢者住宅Tでは280万円、
高齢者住宅Uでは435万円となった。
従って建設費用対効果は、高齢者住宅Tが5.2倍、高齢者住宅U
が 1.1倍となった。
分析
@試算の結果、高齢者住宅整備によって介護費用軽減効果が十分見込め
ることが明らかになった。
A費用対効果は高齢者住宅Tで大きくなったが、これは新築段階でごく
わずかの出費をして高齢者仕様としておくことにより、将来の介護
負担を大きく軽減できることを示しています。
B特に重要な点は間取り(プラン)配慮の必要性であり、居寝室を
1階に配置し、便所や浴室を隣接させることが、要介護となった
ときの住宅の利用能力、ひいては介護軽減効果に決定的な違いを
もたらすことが明らかとなった。
また住宅改造を行い住み続けた場合を想定し、実勢単価を入れると
明確な比較が出来ますので、それぞれのケースで積算してください。
(条件) 一人暮らしの老人A氏の5年間にかかる毎月の介護費用。
@自宅に住み続ける
(改造は行わない。重介護サービスが必要)。
A自宅に住み続ける 高齢者住宅T相当
(改造を行う。車椅子である程度自立した生活可能)
B自宅に住み続ける 高齢者住宅U相当
(改造を行う。車椅子である程度自立した生活可能)
C特別養護老人ホームに入所
各種計算結果は、物価変動や地域性で変化します。