趣味の漢詩

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五言絶句(下平一先韻)然・年。


絶  句ぜっく             杜  甫とほ

江碧こうみどりにして鳥いよいよ白く
山青うして花えんとほっ今春こんしゅんみすみす又過ぐ
何れの日か是れ帰年きねんならん

 
【杜 甫】こちらに記載

【語 釈】
絶句=絶句は詩の体をいい、従って
この詩は「無題」と同じ。
江=ここでは成都の町を流れている
岷(びん)江をさす。
ここ成都では錦江という。
碧=濃いみどり。エメラルド色。
逾=ますます。「愈」と同じ。
欲然=「然」は「燃」と同じ。
いまにも燃え出さんとするばかり
であるの意。看=みりみるうちに。
みている間に。時間や状態がまの
あたりに移りゆくさまを形容する語。
帰年=故郷に帰ることのできる年。


【通   釈】
錦江の水は深いみどり色に澄み、そこに
飛び遊ぶ水鳥はいっそう白くみえる。
山々は青々と茂り、花は燃え出さんばかり
に真っ赤である。今年の春もみるみるうちに
過ぎ去ってしまおうとしている。いったい、
いつになったら故郷に帰れるときがやって
くるのであろうか。
【鑑 賞】
杜甫がこの詩を作ったのは、戦乱のため
都を遠く離れて、蜀にいた時である。
故郷を遠くはなれた地で、いつ帰れるあても
ない、やり切れなさをうたったものである。
前半は、碧・白・青・紅とあざやかな色を
使われて、いかにも美しい蜀の春の風景を
余すところなく表現している。水の碧を背景
にして鳥の白、山の青さを背景にして花の
紅さが一きわあざやかに浮かびあがる。
まさに絵のようだ。去年も今年も、毎年めぐり
来る春の美しい風光は、じつは我が故郷の
ものとは異なった春の光景なのだ。
異郷春があざやかであればあるほど故郷
の春が一しおなつかしく思い出される
のである。そして、この春・今年のこの
春もまた過ぎんとし、もう一春今年も異郷
に過ごさねばならない。明るい景色を背景
にした寂しい感情がじつによく出ている。



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