Internet Explorer の ブラウザでご覧下さい。



秦 淮しんわいに泊す       杜  牧とぼく
煙は寒水かんすいめ月はすなを籠む  
夜 秦淮に泊して酒家しゆかに近し
商女しょうじょは知らず亡国ぼうこくの恨み
こうを隔ててなおとの後庭花こうていか
秦淮

七言絶句(下平六麻韻)沙・家・花


【語 釈】
★秦淮=川の名。金陵(今の南京)の南側を
長江へ流れてゆく堀。
昔、秦の始皇帝が山を切り開いて通した。
★煙=もや。夜霧。 ★籠む=たちこめる。
★寒水=冷たい川の水。秦淮の河の水をさす。
★月沙を籠む=月の光が白く照らしているいる
砂地の様子。 ★酒家=料亭。
★商女=酒をすすめ歌舞で客をもてなす妓女。
★亡国の恨み=陳の国がが滅んだことへの恨み。
★後庭花=「玉樹後庭花」という歌曲の略名。

【通 釈】
夕もやは、冷たい秦淮河の水の上にたちこめ、
月は川岸の砂を照らしている。今夜は秦淮の河に
舟泊りをしたが、川の向こうに料亭がある。
妓女たちは、昔、ここを都にした陳の国の亡んだ
歌とも知らず、玉樹後庭花の曲を歌っている。
【解 説】
夜、秦淮の川に舟を浮べて泊まり、岸の向こうから
料亭の妓女たちが、客を相手ににぎやかに歌って
いる、玉樹後庭花を聞き、感慨にふけっている。
今の、のどかで平和な時代を連想させる。
【杜  牧】(803-852)

【鑑 賞】
 先ず第一句の情景描写が素晴らしい。晩秋の夜
寒々とした川面にもやがたちこめ、白々とした砂浜
を照らしているところを、印象深く詠っている。「籠」
の字を二度使い、その部分を包みこんだような、雰
囲気がかもし出されている。そして後半の詩のムード
が、より活かされている。玉樹後庭花を聞きながら、
過去の悲しい亡国の歴史を想い詠ったやるせない
気持ちがよく表れている。尚、「煙は寒水を籠め」と
「月は沙を籠む」は句中対になっている。
 「玉樹後庭花」の作者は六朝の最後の皇帝、
陳の後主・陳叔宝ちんしゅくほうで、歌は哀調を帯びている。
陳の後主は詩歌音曲の才に恵まれていたが、
きらびやかな宮廷の遊びに明け暮れ、日夜酒色に
おぼれ政治をかえりみなかったため、隋に攻められ
ても為すすべも知らず、捕らわれの身となり遂に
 国は亡んだ。
なお、杜牧のこの詩が詠われたのは陳が亡んでから、
約250年後である。

目 次

BBS掲示板  ご感想などをお書き下さい。

お手紙

自己紹介  ホーム  愛媛ふる里館