心の病気が治るということは、成長だと私は思います。
うつ病などの心の病気には明るさはありません。本人や家族にとっては心の病気であるということで新たなストレスをかかえます。
しかし、気分の落ち込みや心の病気は、今まで選んできた心のありかたや生き方が、現状には合わなくなってきたことを知らせてくれる大切な働きがあります。
この気分の落ち込みの中では、そこからいつか抜け出して、自然に生きている自分の姿を想像することはとても難しいことです。
ですが、無力な自分をそのまま受け入れ、自分ではどうしようもない他人を受け入れ、自分や他人の力をもってしてもままならない世間を受け入れることができるようになれば、その人は本来の輝きを取り戻していきます。
ただ、そうなっても、それは「普通」の生活が普通に営めるようになっただけのことで、光輝くきらびやかさを身に付けるわけでは決してありません。
お薬に頼らざる得ない状況になることもあるでしょう。
とはいえ、落ち込みから抜け出し、普通に生活できるようになれば、苦しい自分を乗り越えたこと、新たな生き方を見出したことになります。落ち着いた大人として地に足のついた自分をみつけることができます。
本当の意味で心の病気が治ることは、単に気分が落ち込まなくなったり、異常な症状があらわれないことではありません。 辛く、苦しい状態を避けることができるようになったこととも少し違います。