抑うつ状態になると色々な考えが頭の中に浮かんできます。ですが、抑うつ状態で頭の中に浮かぶ考えは、あまり人生を建設的な方向に導くものではありません。考えれば考えるほど悲観的な考えの方向に傾いて行きます。この悲観的なものの見方や考え方が、気分の沈み込みと関係しています。
私の考えでは、たぶん、無意識が自分の活動を停止させるために勝手に考え方自体を操作しているのだと私は思うのですが、それにしてもこの考え方の悲観的な方向への操作は操作されている本人の意識には壊滅的な打撃を与えるようです。
認知療法では抑うつ状態になったときの心の状態は、自分や自分を取り巻く環境の認識のあり方が歪んだ状態であると考えています。抑うつ状態になるとこの状態に特有な考え方の傾向があらわれて、それがその人の気分を落ち込ませてしまい、その気分の落ちこみがまた新たな悲観的な考えを生んで悪循環していきます。自分のことを考えれば考えるほどどんどん自分の気分を害する方向へ考えが引きずられて行き、さらに気分が落ちこむようになっていきます。
誰でもそうですが、自分の頭の中にある考えだけが正しいとどうしても思えるので、この考えの悪循環にはまっていることになかなか気づきません。
この悪循環は時間の経過と共に徐々に確実に進行していきますが、その進行が急激におこるわけではないため、状況がかなり悪化するまで自分自身が気がつかないことが多いのです。この場合、「今の状況はなんとか自分が努力したら回復できる」とか、「頑張れば何とかなる。」といった盲信で人生を突っ走っています。ストレスが溜まって体や心を休めないといけないのに、休むことはよくないこととか、周囲の期待に答えるためになどの適当な理由をつけて頑張り続けます。
そんな状態が長く続くと、体も心もぼろぼろになってしまいますが、こんな筈じゃないと理性は思いつづけています。こうなると体のほうはたまったものではないので、体や心がぼろぼろになったところで生命を維持する機能を担った大脳辺縁部が情動を操作して「やる気」そのものを減退させてしまいます。そうしないと自分の健全な身体の状態を維持できなくなって、心身症などの病気になってしまうかもしれません。