事故などで脳に障害を受けた人を調べていくと、ある日突然忘れていた過去を鮮明に思い出したりすることあったりするそうです。オリバーサックスの「レナードの朝」とか「妻を帽子と間違えた男」とかの著作を読むとそのあたりのことが詳しく書かれています。
人は受け入れがたい状況を目の当たりにするとその気持や事実を無意識の中に封じ込めることで、精神のバランスをとることがあるようです。
ところが、何かのきっかけで無意識に押し込めたはずの事柄が別の形で現れることがおきてきます。
これらの問題行動を軽減するために、無意識に押し込められた過去の事実を顕在化させて問題行動の理由を探ろうとする療法が「精神分析」と呼ばれるアプローチです。ただ、この精神分析はきちんと訓練を受けた人が行わないとせっかく無意識に押し込めてきちんとバランスを取っていた心の状態を狂わせてしまうことがあります。それに精神分析は問題行動の理由は分析できても、それからどのように生活を改善して行けば良いかという問いには答えてくれません。問題行動の理由がわかっても、それを受け入れることができなければ、どうしようもありません。
そういった無意識というものは、自分が自分の心を観察するとき、意識することはできません。
本人が意識できないから無意識なんですが、周囲の人から見ていると、この人はこのところが問題なのではないかとわかるときがあります。
それを見つけたからといって、そのことを本人に簡単に告げて良いかというと、それは簡単ではありません。
自分がその問題を乗り越えられるほど成長している場合は良いのですが、そうでない場合、現在起こっている問題と過去に起こった乗り越えられない大きな問題の両方を解決しなければならなくなり、相当しんどいことになります。