そんな中で、私はあるプロジェクトで、「どのようなハードを使ってお客さんの要望を実現するか?」と言った基礎的な検討をしていました。
検討が終わった段階でそのプログラムを作ることになり、プログラム開発をする人たちが新たに加わりました。
私の感覚では「加わった」というより「押し寄せてきた」ようなイメージでした。というのも、検討していたメンバーは徐々にいなくなり、新たに加わった人たちのほうが多くなってきたからです。
その開発グループを率いていた人が私より年齢が若かったのですが、最終的には私の上司になりました。その上司が連れてきた人たちは皆私より若く元気に満ち溢れていました。
私はそのグループでの仕事のやり方を知らないメンバーでした。彼らはもともと別のグループで長年一緒に仕事をしている仲間同士です。何でもさくさくこなしているというイメージが私の中にありました。
私はと言うとそんな人たちとうまくやって行けるか不安でした。私との年齢にも開きがあり、嫁さんと子供を持っているのも私だけでした。なので、グループの人から見ると、知らないおじさんが入ってきたという感じだったと思います。
とりあえず、私が最年長者だったので年齢らしくしっかりしたいという気持ちはありましたが、仕事については何も知らない自分がいました。
このころから、世間との歯車が何かうまくかみ合わないことを感じていました。
私は本当は年下の人にえらそうに使われるのがひどくいやだったのですが、それを表には出しませんでした。
それに、ソースプログラムを直接書くより手間のかかるフローチャートなんかを書くのはとっても無駄なような気がして、まじめに取り組めませんでした。
でも、「その仕事が嫌だ」とか「私にはこんな仕事は出来ない」とかを口に出して言う事は口が裂けてもできないことでした。新入社員だって私の態度を見ているのです。そんなことを言う事はグループのために良くないと思っていました。
当時私は、月に150時間程度残業をしておりました。疲れがたまってきていたせいもあるのでしょうが、だんだん仕事が思うように進まなくなりました。
しかし、仕事は待ってくれません。徹夜で仕上げた資料に誤りがあることがわかり、先ほどの上司に「なめとんのか!」とまで言われました。徹夜までして仕事をしたにもかかわらず、そんなことを一切考慮しない言動に怒りを感じましたが、誤りを作ったのは私の責任なので黙っていました。
誤りを修正してまた夜遅くまで仕事をして原付で家路に向かったのですが、どうしようもない怒りのためアクセルは全開。丁度満月の夜だったので狼になったみたいに月に吠えながら走った事を覚えています。